パイプライン管理とは営業全体を見渡す画期的手法
パイプライン管理とは、初めてのコンタクトから契約・アフターフォローまでの流れを可視化し、適切な管理およびアドバイスをするマネジメント手法です。
営業フローを水やガスが送られるパイプラインに見立てて時系列で管理することで、パイプラインのどこで詰まりが生じているか特定して対処しやすくなります。
結果的に、営業担当者本人が自分の業務フローを改善しやすくなるだけでなく、マネージャーによる管理に活かすこともできます。
社内で評価されているロールモデルや大きなトラブルに至った事例のパイプラインをチェックすることで、学ぶべきポイントが浮き彫りになります。自社の課題や強みを可視化したいときにこそ、パイプライン管理を徹底しましょう。
パイプライン管理を行うメリットと注意点
ここでは、パイプライン管理をするメリットを解説します。効果を最大化するために、導入前にチェックしておきたい注意点についても触れます。
パイプライン管理を実施する4つのメリット
パイプライン管理を実施するメリットは、下記のとおりです。
・課題発見がスムーズになる
・目標や結果などを根拠に基づいて算出可能
・的確な指導が可能になる
・マーケティング活動にも良い影響がある
営業フローをフェーズごとに細分化することで、万が一トラブルやミスがあったときの発見がスムーズになります。場合によってはトラブルの芽を摘むこともでき、クレームの予防効果が発揮されることもあるでしょう。
また、データに基づく組織運営ができるので、想定通りに進まないときの課題も見つけやすくなります。たとえば「初回面談後の再アポ率が低い」と課題に気付けば、「初対面のコミュニケーションに課題があるかもしれない」と、具体的な改善につなげられます。
また、月ごと・年ごとのデータを参考にしながら実現可能性の高い目標づくりができれば、営業担当者のモチベーションも向上します。目標との差分を埋めるためのマネジメントもしやすくなり、的確な指導もしやすくなるのです。
ほかにも、広告やSEOといったマーケティング活動の影響を営業の視点から分析したり、今後注力すべきチャネルを評価したりする使い方もあります。受注までの各フローのパイプラインを分析することは、営業活動の効率化や生産性向上につながるのです。
パイプライン管理における注意点
パイプライン管理をする際は、管理情報を常に最新状態にできるよう配慮が欠かせません。メールや電話でのやり取りがパイプライン上に反映されていなかったり、数値やデータが古い年度のままだったりすると、効果的なマネジメントができなくなります。
時には誤った判断からクレームやトラブルにつながったり、効果が現れず無暗な方向転換をして現場が混乱したりすることも考えられます。また、プロセスを細分化しすぎて全体像が見えなくなるのも危険です。
そのため、デジタルツールを導入してリアルタイムに情報共有できるようにしておきましょう。
加えて、情報が漏れなくシェアされるようにすることも重要です。マネジメント層だけでなく現場で働く営業担当者も幅広い情報を閲覧できるよう工夫し、個人ごとの気づきを促進できる環境を構築しましょう。
営業担当者が細かな管理を嫌うことがないよう、パイプライン管理の意義・目的を正確に社内で周知することも大切です。目的が不明確なままパイプライン管理を始めてしまうと、「上司が厳しく管理するようになって息苦しい」と組織全体への不信感につながることも少なくありません。
細かな進捗の入力を面倒に感じて、情報の更新が滞ったり、パイプライン管理自体が形骸化してしまったりすることも考えられます。従業員への周知はもちろん、共感を得て行動に直結させられるよう対策することも大切です。
成果に結びつくパイプライン管理の実践的な方法
最後に、成果に結びつくパイプライン管理の方法を解説します。
パイプライン管理はあくまでも手法のひとつであり、全体を管理するだけでは期待した効果が得られません。最大限に有効活用するためのポイントを確認しましょう。
パイプラインを管理する基本的なステップ
パイプライン管理をするための基本的なステップは、下記のとおりです。
1.営業プロセスを見直す
2.営業プロセスを細分化する
3.プロセスごとにゴール・目標を設定する
4.現状を各プロセスに当てはめる
1.営業プロセスを見直す
まずは今の営業プロセスをすべて書き出し、どのような動きをしたうえで契約に至っているのかを把握します。状況把握の段階で無駄が見つかれば、カットしてみることを検討しましょう。
2.営業プロセスを細分化する
次に業務プロセスを細分化します。たとえば「広告やダイレクトメールでのアプローチ」「アポイント獲得」「ヒアリング」「提案」「見積り取得」「相談・交渉」「受注」などです。
「広告やダイレクトメールでのアプローチ」など、リード客の獲得に当たる部分は複数の手法を同時並行で進めている企業も多いのではないでしょうか。確実な効果検証をするために、獲得手法はすべて書き出しておくのが理想です。
また、受注後の「アフターフォロー」「カスタマーサポート」なども営業担当者の裁量であればパイプラインに加え、課題を発見するきっかけにしてもよいでしょう。担当者ごとにプロセスの認識に差が出ないように定義を定め、共有することが大切です。
パイプラインづくりをするときは、営業担当者の理想ばかりが詰め込まれないようにすることに注意を払います。あくまでも「成約に至るまで顧客がどのようなステップを歩むか」を客観的に可視化するまでに留めることがポイントです。現状だけを意識し、今後の展望や理想を反映させないように注意してください。
ほかにも、プロセスを細分化しすぎないことも重要です。細分化しすぎると、営業担当者がパイプライン上のフローに引きずられてしまいます。マニュアル化された営業活動になってしまうことがあるので、注意しましょう。
3.プロセスごとにゴール・目標を設定する
次に、各プロセスから次のプロセスへ進むためのポイントを設定します。どのような状態になったら次のプロセスに進めるのか可視化しておけば、営業担当者の判断に迷いが出るのを防げます。より高確度で営業しやすくなり、契約率も高くなる可能性が出てきます。
4.現状を各プロセスに当てはめる
最後に、現状のプロセスや進捗をパイプラインに当てはめていきます。顧客数やCVR(次のプロセスへの転換率)といった数値も反映させましょう。
このときゴール設定や定義付けが不明確になっていれば、臨機応変に調整しながら、少しずつブラッシュアップしていきましょう。
数値分析が最も重要になる
パイプライン管理では、数値での状況把握・分析・改善が重要です。プロセス・営業担当者・最終的な成果、あらゆる観点で数値的に判断し、どの数字をどうすれば最終的な成果が高まるのかマネジメントしていきます。
円滑な営業活動を阻む要因となっているプロセスが見つかれば、その後の改善にも役立ちます。
まとめ
パイプライン管理は、マネジメント層だけでなく営業担当者本人や同僚の営業担当者にもメリットがある手法です。
個人がつまずいているポイントを可視化しやすくなるだけでなく、ロールモデルのやり方を共有したいときにも活用できます。ステップごとの注意点を意識しつつ、効果的に取り入れていきましょう。