営業部門のDX化とは
そもそも、DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、直訳すると「デジタル変革」を意味します。デジタル技術を活用して、社会生活をより良いものにすることが目的です。
平成30年12月に経済産業省が「DX推進ガイドライン(現:デジタルガバナンス・コード2.0)」を発表したことで、企業におけるDX化の重要性が広く知られることになりました。
営業部門におけるDX化は、デジタルツールやデジタルチャネルの導入により、「顧客の販売行動」「営業活動のタイミング」を最適化する取り組みです。例えば、CRM(顧客関係管理ツール)やSFA(営業管理ツール)などを活用し、組織内で情報の共有や連携を行うことで、業務効率化と、高い収益性を目指します。
これまでのデジタル化は、デジタルツールを用いて、バックオフィスの業務の効率化を図ってきました。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大を機に、対面での営業活動が難しくなり、営業スタイルの根本的な見直しが求められるようになったのです。そこで、営業のオンライン化に乗り出す企業が増え始め、DX化が注目されるようになりました。
また、人口減少による労働不足の課題もあり、ひとり当たりの生産性も重要度を増しています。このような課題に対応するため、営業のDXが急がれているのです。
営業部門をDX化するメリット
営業部門のDX化は、営業活動の変化や、人材不足を解消するために欠かせない取り組みです。
自社の営業部門でDXを推進するとどのような効果があるのか、ここではDX化の3つのメリットを紹介します。
営業の生産性・効率を向上させる
営業部門のDX化を行うメリットのひとつが、営業の生産性と効率を向上させることです。従来の営業手法では、リードの獲得に時間がかかったり、見込みのない顧客にアプローチしたりと、非効率的なケースも多く見られました。
一方、MA(マーケティングオートメーション)を活用すれば、リードナーチャリングを自動化できるため、大幅な工数削減が実現します。Web上での顧客のアクションをもとに、質の高いリードを獲得するのにも役立つでしょう。
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属人的な営業からの脱却
ふたつ目のメリットは、営業部門のDX化を行うことで、属人的な営業から脱却できることです。
営業部門が属人化する要因として、情報共有が不十分な点が挙げられます。この状況では、担当が異動・退職してしまうと、後任者は顧客へ的確に対応できません。最悪の場合失客してしまうこともあるでしょう。
営業部門のDX化を図ると、顧客情報や活動進捗の共有も容易になります。また、優秀な営業パーソンのノウハウやナレッジを共有することは、組織全体の生産性を高めることにもつながります。
マネジメントの効率向上
従来、管理職が商談に参加するには直接出向かなければならず、すべての案件を把握するには限度がありました。
一方、Web会議システムを導入すればオンライン商談が可能になります。管理職が自席にいながらでも商談に参加できるようになり、商談状況の把握や、営業パーソンへの的確な指導が可能となりました。
また、SFAに蓄積された営業パーソンの顧客への対応履歴を分析すれば、商談を成立させるポイントを発見したり、営業成績に差が出る要因を特定したりもできます。
場面別の営業部門のDX施策
営業部門のDX化を実現するためには、場面別の施策を講じなければなりません。
ここでは、「リード獲得」「顧客育成」「既存顧客の分析」の3つのDX施策を解説します。
リード獲得段階でのDX
リード獲得に関する業務をDX化するには、デジタルマーケティングを取り入れる必要があります。
先に述べたとおり、これまでの営業方法にはリード獲得までに、時間とコストがかかる課題がありました。デジタルマーケティングは、SNSやオウンドメディアを活用し、これまでアプローチできていなかった層にも接触することが可能です。商品の購入を検討している顧客や潜在顧客にアプローチできれば、効率的にリードを獲得できるでしょう。
成果につなげるには、リードの興味や関心を惹く情報を提供するのがポイントです。定期的にユーザー行動や効果を分析し、コンテンツの改修を行いましょう。
顧客育成段階でのDX
顧客育成に関する業務をDX化するには、MAやSFA/CRMの導入が効果的です。
例えば、顧客育成の手法としてよく実施されるメールマーケティングの最大の課題は、「メールが開封されない」ことです。そこで、MAによってリードの確度に応じたメールを自動配信すれば、開封率を高めることができます。
また、SFA/CRMを導入することで、顧客データを用いたより効率的なメールマーケティングが実現します。
既存顧客の分析段階でのDX
既存顧客の分析段階でのDX化ではSFA/CRMを活用し、自社商品を購入した既存顧客の顧客満足度の向上を目指します。
営業担当者が扱う情報をSFA/CRMで管理することで、既存顧客のニーズに応じた効果的なアプローチが可能になります。取り扱う情報は、たとえば顧客情報や成約情報、営業活動に関わる商談履歴などです。顧客との良好な関係を継続するのにも役立ちます。
営業部門のDX化はまず全体設計を
営業部門のDX化は全体設計から始めることが重要です。DX化にデジタルツールの導入は必要ですが、ツールはあくまで手段であり目的ではありません。
まず、デジタルツールの導入目的を明確にしましょう。「新規顧客獲得のため」なのか「既存顧客の営業フォローのため」なのかを見極めることから始めます。
また、自社の営業パーソンが活用することを想定して、どのようなツールを用いるのか検討しましょう。現場のニーズを把握するには、営業プロセスを営業パーソンにヒアリングすることも有効です。
管理職の意見だけでデジタルツールを導入すると、導入の目的が不明になり、現場の営業パーソンが充分に活用できない事態になりかねません。デジタルツール導入の目的や、ツール導入後は利益を上げられるのかなど、全体設計を行ったうえで実行に移しましょう。
まとめ
営業部門のDX化は、生産性の向上や属人化からの脱却、マネジメントの効率化など、企業にとってメリットの多い取り組みです。
しかし、単にデジタルツールを導入しただけでDX化は効果を発揮しません。デジタルツールの導入は、あくまでDX化を進める手段の一部に過ぎないためです。
ツールを最大限に活用するためには、営業活動の抜本的な改革や、企業によっては部署を超えた組織的な取り組みが必要になると考えられます。ぜひ、自社の目的を明確にし、営業部門のDX化を実現してください。